いろんなお話たち





子供の頃は純粋だ。
人でも、ドラゴンでも何でも。
だから平和的志向に満ち溢れている、「次期国王」は多い。
「(……けどなあ、騙されちゃ……)」
いけねえよ。
その時の考えなんてものは、月日が流れれば変わっちまう。
大人になれば特にそうだ。
子供の頃考えていたように世界は甘くないのだということを……あれ?
「!」
閉じていた瞼を開け、落ちていた頭をばっと起こす。
晩餐中にも関わらず、両腕を組んだその上に頭をつける感じでテーブルに突っ伏していたとは……。
「お、エレオス起きたのか?」
なれなれしくジャックとかいう男の声が横でして、
「おー……」
だるく重い頭に、なんで眠気もなかったのに、と片手で頭をかく。
しかも食事にも一切手をつけずに。
おかしいぞ、自分………。

ん?

テーブルの上をちょこちょこと歩く、先に丸い玉がついている青色の帽子をかぶる〝小人〟。
そいつは少し前に訪れた町の祭りで、ピエロが着ていたものと同じ、大きな襟の水玉模様の青い服を着ていた。
「………」
なんだっけ、こいつ。
手なれたように自分の体よりも大きなナイフとフォークを使い、肉を切りそのまま食いつく様を眺める。
随分食欲旺盛な……ああ、それでちょっとおかずが減ってるわけ?
「………」
へええ、よっぽど腹ぺこなんだな。
そいつは可哀相に。
いいよ、わけてや
「――――――おい」
……る気なんて、ある訳ない。
他に食材を狙ってもいい奴はいるだろうに(隣の盗賊とか)、よりによって俺のを狙うとは。
威圧半分、本気の怒り半分。
エレオスは低い声で小人を呼び、襟ぐりを掴んでその体を持ち上げた。
キーキー猿みたいに騒ぐそいつを、自分の顔の前まで運び、
「……お前なぁ、竜は竜でも、俺は食わないと生きていけね」
え体なんだ。
全部食うことはないだろ、………台詞が全て言い終わるまでに、意識が飛んでた。
両手とも小さな掌をこちらに向け、
『――――!』
何か呪文を唱えた小人に。
白い光に、小人の正体を思い出し、同時にしまった…! と思った時にはもうやられてた。


あちゃー……また、変な『夢』を見る羽目になってしまった。
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