いろんなお話たち
★
翌日。
――ピピピ…
目覚ましヒヨコ時計のアラームを寝ぼけ眼で止めた。
「うう〜ん……」
両手伸ばして、ふあ〜っと欠伸する。
…あれ、なんか頭痛いな……。
まぁ、早く起きたからかな。
のそのそと体を起こすとズキン、と後頭部に痛みが走りベッドから抜け出し何歩か歩きだすと今度は頭の上に何か乗ってるような…ん…、首に違和感。
頭、重い? んんん…おかしいなー。
「(昨日あれからすぐに寝たのに…)」
そうそう、しくしく泣きのつもりが声上げてわんわん泣いちゃって。
そしたら弟がやってきて、子機を握りしめる私に一言。
『ねーちゃん、何やってんの?』
その冷めた顔に意識が醒めて慌てて寝る支度を……したんだ。
そうだ。
ぶつぶつ悩みながら窓のカーテンを開ける。
「!」
うわあっ、眩しい…!
まるで光に照らし出されるスターか何かの気分だった。
窓から差し込む明るく強い朝の光。
思わず私は手をかざす。
目覚まし時計…心配だから5時に設定しといたんだけど、(今までその時間に起きたことないからわからなかったけど)朝ってこんなに日差し強いものなんだなぁ。
もうちょっと柔らかい日差しをイメージしていたのだけど。
「…よ〜し! 今日は天気もいいし、新しいタオルをおろそうっ」
んんーっと伸びをしてタンスへと向かう。
タオルは管楽器の穴から零れる唾(水滴)を拭き取る役割兼、エアトレーニングの際に使う。
エアトレーニングというのは顔の前にタオルを広げて持って、それにフッと息を吹きかけて、タオルを浮かせるトレーニングで、チューニングの前に腹式呼吸の訓練も意味してやっているトレーニング。
……って、ここまで語っておいて、私の担当はパーカッション。
打楽器です。
教わる先輩はフルートとパーカッションを両立してる方なのだけど(でもここ最近は先輩自分でやるのはフルートばっか)あこがれから……エアトレーニングしちゃってます。
しないよりした方がやっぱり体にもいいんだろうし、
「(今は無理だけど、そのうちトランペットやフルートを…!)」
そう、何よりもそれ。
ソレを目標に頑張るのよー!
「…?」
士気を高めてるトコでふと扉の向こうで階段をのぼる足音がし、
(私の部屋はこの家の構造でいうと2階)
「……」
待っていると、扉を開けて顔を出したのは、
「…あら」
おかーさん。
「おはよう。やっと起きたのね」
「?」
…あれ、ちょっと日本語おかしくないか?
きょとん、とした顔で首を傾げるとお母さんはくすくす笑いながら口に手をやり。
「朝ね、時間になったけど、起きてこないから……具合でも悪いのかと思って、そのまま寝かしておいたのよ」
「………え゛……」
お母さんは私が小さい頃から、そう。
この通り非常におっとりとした、のんびり屋さんで、だから小学校の頃とか「寝坊阻止のために親に叩き起こされる」ということは我が家では存在しなくて。
お父さん、弟…私、みんな個々に目覚まし時計を握りしめて寝る生活。
もしかして設定時間を間違えたのだろうか?
「……」
で、でも、まさか。
弟はともかくとして、お父さんが私を放っておくなんて。
あの優しい、けれど時間に対しては厳しいまじめなお父さんが……まさかそんな。
怖くて壁時計の針の位置を確認できない。
いや、いちいち確認して絶望してる時間なんか、もしかしたらないのかもしれない。
「まさくんから聞いたけど…どこか具合でも悪いの?」
まさくん、ってのは弟を呼ぶ時の母の呼び方で。
心配そうな顔で額に手をあててくる…けど、私はそれをぱっと払った。
「ごめんっ、えっと、だ、大丈夫、だからっっ」
元気元気、とお母さんに拳を握ってみせる。
ああああっ、話す時間さえも今は惜しいっ。
弟が何か余計な口をはさんだのか気になるところだけど。
今はとにかく、急がなければ。
翌日。
――ピピピ…
目覚ましヒヨコ時計のアラームを寝ぼけ眼で止めた。
「うう〜ん……」
両手伸ばして、ふあ〜っと欠伸する。
…あれ、なんか頭痛いな……。
まぁ、早く起きたからかな。
のそのそと体を起こすとズキン、と後頭部に痛みが走りベッドから抜け出し何歩か歩きだすと今度は頭の上に何か乗ってるような…ん…、首に違和感。
頭、重い? んんん…おかしいなー。
「(昨日あれからすぐに寝たのに…)」
そうそう、しくしく泣きのつもりが声上げてわんわん泣いちゃって。
そしたら弟がやってきて、子機を握りしめる私に一言。
『ねーちゃん、何やってんの?』
その冷めた顔に意識が醒めて慌てて寝る支度を……したんだ。
そうだ。
ぶつぶつ悩みながら窓のカーテンを開ける。
「!」
うわあっ、眩しい…!
まるで光に照らし出されるスターか何かの気分だった。
窓から差し込む明るく強い朝の光。
思わず私は手をかざす。
目覚まし時計…心配だから5時に設定しといたんだけど、(今までその時間に起きたことないからわからなかったけど)朝ってこんなに日差し強いものなんだなぁ。
もうちょっと柔らかい日差しをイメージしていたのだけど。
「…よ〜し! 今日は天気もいいし、新しいタオルをおろそうっ」
んんーっと伸びをしてタンスへと向かう。
タオルは管楽器の穴から零れる唾(水滴)を拭き取る役割兼、エアトレーニングの際に使う。
エアトレーニングというのは顔の前にタオルを広げて持って、それにフッと息を吹きかけて、タオルを浮かせるトレーニングで、チューニングの前に腹式呼吸の訓練も意味してやっているトレーニング。
……って、ここまで語っておいて、私の担当はパーカッション。
打楽器です。
教わる先輩はフルートとパーカッションを両立してる方なのだけど(でもここ最近は先輩自分でやるのはフルートばっか)あこがれから……エアトレーニングしちゃってます。
しないよりした方がやっぱり体にもいいんだろうし、
「(今は無理だけど、そのうちトランペットやフルートを…!)」
そう、何よりもそれ。
ソレを目標に頑張るのよー!
「…?」
士気を高めてるトコでふと扉の向こうで階段をのぼる足音がし、
(私の部屋はこの家の構造でいうと2階)
「……」
待っていると、扉を開けて顔を出したのは、
「…あら」
おかーさん。
「おはよう。やっと起きたのね」
「?」
…あれ、ちょっと日本語おかしくないか?
きょとん、とした顔で首を傾げるとお母さんはくすくす笑いながら口に手をやり。
「朝ね、時間になったけど、起きてこないから……具合でも悪いのかと思って、そのまま寝かしておいたのよ」
「………え゛……」
お母さんは私が小さい頃から、そう。
この通り非常におっとりとした、のんびり屋さんで、だから小学校の頃とか「寝坊阻止のために親に叩き起こされる」ということは我が家では存在しなくて。
お父さん、弟…私、みんな個々に目覚まし時計を握りしめて寝る生活。
もしかして設定時間を間違えたのだろうか?
「……」
で、でも、まさか。
弟はともかくとして、お父さんが私を放っておくなんて。
あの優しい、けれど時間に対しては厳しいまじめなお父さんが……まさかそんな。
怖くて壁時計の針の位置を確認できない。
いや、いちいち確認して絶望してる時間なんか、もしかしたらないのかもしれない。
「まさくんから聞いたけど…どこか具合でも悪いの?」
まさくん、ってのは弟を呼ぶ時の母の呼び方で。
心配そうな顔で額に手をあててくる…けど、私はそれをぱっと払った。
「ごめんっ、えっと、だ、大丈夫、だからっっ」
元気元気、とお母さんに拳を握ってみせる。
ああああっ、話す時間さえも今は惜しいっ。
弟が何か余計な口をはさんだのか気になるところだけど。
今はとにかく、急がなければ。