いろんなお話たち

―――
身支度が終わり、部屋を出た。
今日と明日が最後。
最後だから、自分が一番綺麗に見えるドレスが着たいわ、とリディア様が言って。
それでしたら…と私は、儚げなイメージそのままの、淡い水色のドレスを選んだ。
着せた後、鏡の自分を見た後で、リディア様はまた一筋、涙を流して。
「この姿も、明日までなのね…」
ぽつりとそんなことを言って、悲しげに笑った。
私は、その隣で、静かに頭を下げただけ。
何もできない――非力な自分が、恨めしい。
せめて、騎士の人達と同じく、私も剣を持てたら。
でも…そうしたら、きっとリディア様は、私にさえも黙ってた。
私にも黙って、1人で旅立っていただろう。
だとしたらせめて……見送りができるだけでも、いいのかもしれない。
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