いろんなお話たち
何かでツンツンと体を突かれてる違和感がした。
イタズラかもしくは奇行か。
とにかく乙女(と言っていいのは何歳までなんだろう?)を突くだなんて!
怒ろうかと思いバッと起き上がると…。
「……え」
高い位置でりぼんをつけて、ツインテールにした髪がさらりと視界を流れる(りぼんは、お姉さまに貰ったりぼんだよ)……目が合ったのは長い棒を持った男。
棒の先は、私。
どうやらこれで突かれていたらしい。
ライオンかなんかかい私は。
男の顔は青ざめて…と、いうか、なんだその出で立ちは?
いまどき見ないようなボロボロの…貧乏な人が着るような、ただ布を裁っただけよ、という感じの服装。
辺りを見回すと、私を囲う数名の人々。
各々箒や柄の長い物体を武器らしく手にしてるのが気になるけれど、目が合った途端怯えた顔をして、…というか、
「どこ……ここ」
空は茜色。
でも日本じゃお目にかかれないような焼けるような紅い空で、ズラリと同じ高さで左右に並ぶ建物は…どこぞのアールピージーの町を連想させる。
床は石畳。
どうやら私は道の途中で気を失って倒れていたようだ。
……ナゼ?
「(おっかしーな…確か電車に、)」
のろのろと立ち上がると、周囲で悲鳴が起き人々は皆去ってしまった。
え…あの、どちらかというと逃げたいのは私の方なんですけど。
傍で私を見ながらどうやら腰を抜かしたらしいご婦人に、そっと近づいて、
「…あのう、すみません。ここは一体、」
「 !!!」
ところが、聞きなれぬ言語を叫びながらご婦人は去ってしまった。
一拍、中腰のまま私は固まって。
尚もチクチクと感じる野次馬の視線に目を向ける…と、皆そそくさとどこかへ行ってしまった。
指咥えて見てた子供なんかは(彼もかなりの貧乏衣装)バタンと開いた扉から出てきた手に引かれるがまま、家屋の中に消えた。
…………。
どうしろ、と言うの?
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