いろんなお話たち
まず、普段は女の姿でいるが本当は男、という緑髪に茶眼の人は、アルフォンス。
そして橙色の髪に同色の眼を持つ少年は、ヤルミル。
次に私を助けてくれた上は軍服みたいな高級げな上着一枚の人(もちろん返した)、白髪を一纏めにした紫の眼のユリユシュ。
腰まで伸びた青い髪に紺色の眼を持つ、宜しくとか言ってなれなれしく頬にチューしてきた(!)男はエリヤ。
そして狼人間(確認したらそういう種族らしかった。でもやっぱり珍しいので目がいく)のロジオーン。
最後は柔和な笑みを浮かべたいかにも穏やかそうな男、金髪に金眼の細いフレームのメガネ装着のシラス。
……シラス、だけは小魚を思い出しあと唯一のメガネキャラ、ということで一回で覚えたものの。
狼男はなんかハロと呼びそうで怖い諸々。
後の方々については身体的特徴と名前とをメモに書いといた。
「覚える必要なんかない」とユリユシュは言ったけれど、アルフォンスに「今日から彼女はおまえらの仲間だ」と一蹴され彼はロジオーン共々嫌そうな眼を私に向けると、それぞれ部屋に閉じこもった。
そして当のアルフォンスは元々彼らと行動を共にしたのではなく、たまたま再会したとかで話が終わるとすぐに「それじゃ仲良くな」と、家を出て行ってしまった。
彼らは旅の一行で今いるこの家は宿みたいな借り物で、各々の目的の為に東を歩いているようだった。
何の目的かまでは教えてくれなかったけれど。
シラスとヤルミルとエリヤは私が同行することに難を示さなかった。
迷惑でしかないだろうに初対面での恰好を思い出してか、いろいろと気遣って優しくしてくれて。
怖いなら怖いと正直に言っていいと言ってくれた。
私何も返せないのに護ってくれるとも言ってくれた。
求めていた人の優しさに触れてほっとして、ほかにも疲れたのと怖かったのと感情が堰を切って涙となって溢れた。
彼らは傍で私が泣きやむまで待っていてくれた。
いい人たちだ。
アルフォンスがくれた腕輪は言語変換装備が施されているらしく、有難くも何があっても外れないようにしてくれたらしい。
そして時計は壊れていなかったが異世界の物を持つのは危険だとシラスが言うので、バッグの中にしまった。
バッグもろとも処分されるかと思ったが、この世界にも荷物袋はあるらしいから助かった。
異世界から来た、というと一人目を輝かせたヤルミルがいろいろ質問してきたけど夜も更けたとかで私も適当な部屋に入った。
ベッドへ腰かけ、バッグをおろすとさっき泣いたばかりなのに、また疲れが押し寄せてくる。
襲われたりなんなりいろいろあったけど、もし…もしも裸男が来てくれなかったら。
今頃私は身ぐるみ剥がされて夜の路頭を彷徨っていたのだろう。
彼らは一応美形揃いだが、それでも彼らならいいのかと問われるとやはり首を振るだろう。
どうせなら生涯ずっと処女でいるつもりで。
明日からはちゃんと身を引き締めていこう。
そう心中で決め、両手それぞれ握り拳を作ったところで。
コテン、とスプリングに身を沈め。
舞いあがる埃に顔を顰めながら、それでも眠気には勝てずそのまま重い瞼を下ろした。
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