いろんなお話たち
化け物たちの饗宴
死没を描けない画伯がいたという。
なぜ、描けなかったのか。
それは死を知らないから?
視たことがないから?
芸術的感性がものをいう世界で、想像力ほど幻想に溢れ虚無なものはない。
苦痛を描くことはできた。
もがき、苦しみ、喘ぐ人物を。
画伯はいくらでも描くことができた。
しかし、死だけは……。
ああ、これを聞いた時、私は思った。
その世界に入り込むことで、より確かなリアルを生み出せる術。
どんなに思い描いても、本物を越えることはできないのではないだろうか。
そもそも、思惟することさえ、憚られたのではないだろうか――。
死というものほど、人間が畏怖するものはない。
彼は……その末路を描くのが嫌だったのではないかと、私は思うのだ。
芸術家としての本能で、その気がなくても自分と照らし合わせてしまうから。
絵を通して視る、自らの死が彼は怖かったのだと思う。
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