【完】イケメン*眼鏡*ランデヴー
その囁きを確認する前に、残念ながら、私は束の間の眠りから目を覚ました。
夢の中でも鮮明に感じたあの手の感触と、香りと、何かを囁いたあの声。
さっき帰りに永太が『寝て、夢に浮かんだ奴を選んどきなさいよ』って言った通りになったよ。
「そっか、私…………好き、なんだ。」
この夏を、私と共に過ごしてくれた三人の中で、私が一番特別に想っていた人物。
それに気付くと、顔を思い浮かべる度に、じわりじわり、と心がぬくもりと切なさで浸食されていくよう。
「伝えよう。最後の日に、ちゃんと、伝えよう。」
明日、その人に伝える言葉を頭の中で巡らせて、私は畳の上にうずくまり、再び眠りの世界へと意識を飛ばした。