【完】イケメン*眼鏡*ランデヴー
ホールの外の目立たない場所まで出て来た私達は、ようやくそこで落ち着く。
私を抱えたまま地面に座った澪ちゃん。自然と、澪ちゃんの膝の上に座る形になってしまう。
「あの…澪ちゃん、離して?」
「べーる。くまんかい来ちゃってくとぅや、わんを選んでくれたからびんやー?」
この澪ちゃんは、今日は『タンホイザー』じゃなくてちゃんと澪ちゃんだ。何となく、そう思う。
ぎゅっと抱き締められて、陽射しのせいで暑いけど、私も離れたくなくて首に腕を巻き付ける。
「しちゅん。しちゅんよ、悠莉。たーにも渡さねーらん。絶対、離さねーらん。」
ぎゅーっと抱き着く澪ちゃんが可愛くて、私だって、誰にも渡したくないし、絶対離れてやらない。
「私も、しちゅんよ、澪ちゃん。」
だけど、顔が見たくて、少しだけ離れて澪ちゃんを見つめてそう言うと、澪ちゃんの黒目がちの垂れ目が、ゆらり、と揺れる。