君のイナイ季節
「まさか1年後にこんな事をするなんてね」

後夜祭は去年と同じく、屋上で過ごす事にした。

今、グラウンドでは特設ステージで生徒で結成したバンドのライブをしていた。

「ホント、あれからもう1年経ったんだよね」

私は拓海くんを見つめた。

あの時と変わらず、いつも優しく接してくれる彼は私の、本当に大切な人だ。

私からそっと彼の唇にキスをした。

彼もそれに応える。

日は暮れて、辺りは静寂な闇に段々と支配されてきた。

グラウンドの光がそれに抵抗するかのように、文化祭の名残を惜しませている。

光に顔を照らされて。

私達は唇を離した。
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