君のイナイ季節
「真由ちゃん」

職員室を出てすぐ。

拓海くんの声には少し怒りの感情が混じっていた。

「勝手に書いてごめん」

私はすぐに頭を下げる。

拓海くんはため息をつくと

「別に書くのはいいんだけどね、僕もそう思っているから」

私は少しホッとした。

「でも、先生達は進学や就職を期待してるし、そういうのはあまりいい顔しないから、そういうことを書くときは僕に言ってよ」

「ごめん…」

そりゃ、そうよね。

「まあ、でも」

拓海くんはサラサラの髪の毛をかきあげて

「僕は嬉しかったけどね」

照れながら笑っていた。
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