君のイナイ季節
「入学式の時にさ」

拓海くんはいつもより少し横の感覚を開けて歩く。

無視、と言った割には追っかけを気にしている。



「ここで真由ちゃんが桜の花を見上げていて、今日みたいに花びらが舞っていて…」

拓海くんはその時の事を思い出しているのか嬉しそうに笑った。

「本当に綺麗だった」



拓海くんはそう言って立ち止まった。

私も立ち止まる。



私の髪の毛に付いた花びらを指で取ると、拓海くんはそれを風に乗せるように放した。



「生野は中学一緒だし、色々と相談に乗ってもらったよ。
あの文化祭も、少しでもきっかけになるように、って生野が仕組んだ事だよ」

「え〜!!」



全然知らなかった。
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