君のイナイ季節
「こんにちはぁ…」

お店に入って挨拶をする。

最後は消え入るような声になってしまった。

「いらっしゃい」

店長で、拓海くんのお父さんが笑って近寄ってきた。

「久しぶりだね。お父さんはよく来ているよ」

私は苦笑いをした。

パパは休みになるとバイクで出掛けているけど、ここに来ているのか。

「いらっしゃい」

店の奥からは女性。

拓海くんのお母さんだった。

「こんにちは、初めまして」

「こんにちは。いつも拓海がお世話になっています」

優しく、笑っていた。

「あの、早速なんだけど」

拓海くんが口を開いた。

「話したい事があって」

私の背中に緊張が走る。
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