君のイナイ季節
「で、話って?」

奥の事務所に入って話をする事になった。

もう、私の足なんか震えて椅子に座っているんだけど、靴と床の擦れる音がなりそう。

「僕、今、平野真由さんと付き合っているんだけど」

拓海くんは大きく息を吸って

「高校を卒業したら、同棲するなり、結婚するなり、真由ちゃんと一緒になりたい」

私は俯いていた。

恥ずかしいのと、緊張で顔を上げられない。

「…お前、収入とかどうすんの?」

「ん、それが問題」

あっけらかんと拓海くんは言った。

「あのなあ、あっさり言うなよ」

拓海くんのお父さんが怒っていると思って顔を上げると苦笑いをしていた。

「ま、でもお前は今でも店を手伝ったり、いろいろしているから無収入じゃないからね」

お父さんは穏やかな笑みを浮かべていた。

少し安心。

「しばらくは二人で頑張って働いたらなんとかなるんじゃない?」

お母さんは笑った。

「ギリギリの状態で、また守らないといけないものがあれば、拓海の士気も上がるんじゃないかな?」

と言ったお母さんの目は鋭く拓海くんに向けられていた。
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