‐天統べる仙鳥の皇国‐
森の中に響く鳥達の声…。森の中は既に騒乱状態。

そりゃそうだ。場合によっては今まさに、この森の『災厄の事態』なのだ。

私の停まる巨樹の周りに、私の率いる忠実なる仲間の6羽…カケヘピル・テトズ・イクサフ・スーヤ・コーヘル・ホマロ…が急ぎ翔んできてくれた。各自それぞれに枝に停まる。

コーヘルは、私に軍刀とベルトを差し渡しながら言った。


『アシパロフさま…あれが人間の《冒険者》なる者達ですか?』

『あぁ、そうだコーヘル。みんな…あの人間の女を見ろ…』


私はベルトを腰に巻き終わり、翼で人間の女を差す。


『…あの人間の女は弓矢を携えている。戦いが始まったら低く翔び、放つ凶矢を有効に扱わせないよう、十分に注意するのだ』

『分かりました』


遂に冒険者達が森の中へと踏み入り出した。我らも静かに、樹々の枝を翔び移りながら、人間達を見下ろし、観察しつつ後を追う。






日陽が空の最も高い位地に昇った頃、私の周りには仙鳥が79羽も集まっていた。あの人間達は今、自分達の獲猟目的である仙鳥らに囲まれている…とは到底思ってもいないだろう。

…実はここに駆け付けたのは我ら仙鳥だけではない。彼らの仙術により身を森に透かせ、森の各所に潜んだ仙獣達17頭にも、人間達は囲まれていたのだ。

私は左翼を広げ、仲間の仙鳥と仙獣達を制す。


『…人間共よ。聞こえるか。この神聖なる古の森に何が故に侵入した…?』


5人の冒険者らはぴたりと立ち止まり、キョロキョロと辺りを見回している。


『お…おい!アルフレッド!!今…何か聞こえなかったか…!?』

『落ち着けってリック。いいか。ここは俺に任せろ』


両手で重そうな鉄槌を左肩に担ぎ持つ大男が、小剣と盾を構えた男にそう制された。


『おい、聞こえるか。声の主よ。お前は何者だ?』

『我はこの森を護りし神…コムヌバフ』


リックといったその大男は担いだ鉄槌を手放し、茂る地草の上へドスンと落としながら、その図体に似合わず『ひぃぃーっ!!』と声を荒げている。


『…はぁ?コムヌバフ?聞いたことねぇなぁ。神だと?嘘臭ぇ…』


あのアルフレッドとかいう男…さすがだ。落ち着いているな。

私は右翼に持った3つの野林檎と5本の太い枝に、はあっと息を掛けた。
真っ赤な野林檎は見る見るうちに青白くなり、人間の頭蓋骨のように化けた。太い枝も青白く、人間の大骨に化けて変わった。


『…お前達よりも先に、この森へと侵入した人間共…冒険者とか言っていたか…一人残らず喰(くら)ってやったわ…!』


私はそう強く言い放ち、その化けた野林檎と太枝を、冒険者らの目の前へとひょいと投げ落とした。
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