‐天統べる仙鳥の皇国‐
それを見た冒険者達が一瞬恐れ慄(おのの)き、一歩二歩立ち退く。あの大男は既に、腰を抜かして気を失っていた。
『…待ってください!』
あの忌まわしき、布衣を頭から被った人間の一人が、その野林檎の一つにゆっくりと近づき、手に持った長杖で野林檎を軽く突就く。
『アルフレッドさん、見てください。これは…』
『わはは。そういうことか』
あのアルフレッドとかいう男が小剣を鞘にしまい、頭蓋骨に化けた野林檎をヒョイと拾い上げた。そしてガブリと勢いよくかじる。
『これは人の頭骨ではないぞ。ただの林檎だ』
『んな、何?…ただの林檎だと?』
あの情けない大男が目を覚ました。
『こんな幻術が使えるのは…霊鳥《ククルカン》しか有り得ない。皆、気を引き締めて構えろ!…気配こそ感じないが間違いない…俺達は霊鳥共に取り囲まれているぞ!!』
冒険者らは再び武器を構え、周りを警戒しはじめる。
私は仲間の79羽のうち、6羽のを静かに右翼で差して選出する。攻撃の準備だ。
いくら仲間が79羽も居ても、全羽での総攻撃などは絶対にしない。我らが一番厳守しなければならないのは《1羽の犠牲も許さず、人間達に仲間の尊体を渡さない》事だからだ。
人間達は無茶苦茶に武器を振り回す。その奴らの《狙わざる偶然の一撃》が、我らの仲間に致命的な傷を負わせ、取り返しのつかない結果をもたらしてしまうことがある。
つまり、我ら標的が多ければ多いほど、奴ら人間達にとっては《有利》なのだ。
『いいかみんな。たった1羽だけ我が国に持ち帰りさえすれば、俺達は億万長者だ。1羽に狙いなど定めなくてもいい。霊鳥共に向かって滅茶苦茶に、武器や魔術で攻めまくれ!いいな!』
…やはりか。人間達もそのつもりだったようだ。
73羽の仲間達が見守る中、我ら精鋭の6羽が今まさに、私の号令とともに人間達に翔び掛かろうとした…その時だった。
『……!!』
あの弓を構えた女が目を閉じてくるりと素早く振り向き、不穏な動きを見せたかと思いきや…女の放った一矢が、今まさに翔び発とうとしていたテトズの左翼にズブリと命中…射抜かれた。
そのままバランスを崩し、テトズは人間達の目の前にばたりと落ちた。
『畜生ーっ!!テトズがやられたー!!』
『アルフ!やったわ!!』
『ヤバい!!テトズが持ち去られるぞ!!』
『そうはさせるか!!』
私は矢よりも速く翔び、テトズの体を持ち上げようとしていた弓使いの女の頭上を、鋭い両脚の鉤爪で襲い掛かった。
『テトズに触るな!!』
『きゃあ!!』
人間の女が怯む。その隙を見てスーヤとカケヘピルがテトズの体を掴み上げ、巨樹の高枝へと避難した。
『…待ってください!』
あの忌まわしき、布衣を頭から被った人間の一人が、その野林檎の一つにゆっくりと近づき、手に持った長杖で野林檎を軽く突就く。
『アルフレッドさん、見てください。これは…』
『わはは。そういうことか』
あのアルフレッドとかいう男が小剣を鞘にしまい、頭蓋骨に化けた野林檎をヒョイと拾い上げた。そしてガブリと勢いよくかじる。
『これは人の頭骨ではないぞ。ただの林檎だ』
『んな、何?…ただの林檎だと?』
あの情けない大男が目を覚ました。
『こんな幻術が使えるのは…霊鳥《ククルカン》しか有り得ない。皆、気を引き締めて構えろ!…気配こそ感じないが間違いない…俺達は霊鳥共に取り囲まれているぞ!!』
冒険者らは再び武器を構え、周りを警戒しはじめる。
私は仲間の79羽のうち、6羽のを静かに右翼で差して選出する。攻撃の準備だ。
いくら仲間が79羽も居ても、全羽での総攻撃などは絶対にしない。我らが一番厳守しなければならないのは《1羽の犠牲も許さず、人間達に仲間の尊体を渡さない》事だからだ。
人間達は無茶苦茶に武器を振り回す。その奴らの《狙わざる偶然の一撃》が、我らの仲間に致命的な傷を負わせ、取り返しのつかない結果をもたらしてしまうことがある。
つまり、我ら標的が多ければ多いほど、奴ら人間達にとっては《有利》なのだ。
『いいかみんな。たった1羽だけ我が国に持ち帰りさえすれば、俺達は億万長者だ。1羽に狙いなど定めなくてもいい。霊鳥共に向かって滅茶苦茶に、武器や魔術で攻めまくれ!いいな!』
…やはりか。人間達もそのつもりだったようだ。
73羽の仲間達が見守る中、我ら精鋭の6羽が今まさに、私の号令とともに人間達に翔び掛かろうとした…その時だった。
『……!!』
あの弓を構えた女が目を閉じてくるりと素早く振り向き、不穏な動きを見せたかと思いきや…女の放った一矢が、今まさに翔び発とうとしていたテトズの左翼にズブリと命中…射抜かれた。
そのままバランスを崩し、テトズは人間達の目の前にばたりと落ちた。
『畜生ーっ!!テトズがやられたー!!』
『アルフ!やったわ!!』
『ヤバい!!テトズが持ち去られるぞ!!』
『そうはさせるか!!』
私は矢よりも速く翔び、テトズの体を持ち上げようとしていた弓使いの女の頭上を、鋭い両脚の鉤爪で襲い掛かった。
『テトズに触るな!!』
『きゃあ!!』
人間の女が怯む。その隙を見てスーヤとカケヘピルがテトズの体を掴み上げ、巨樹の高枝へと避難した。