君影草
確かに奈々絵の手を取れば、それはそれで幸せなのかもしれない

奈々絵はいい子だし、一緒にいて楽しい

今はまだ想いはなくともいつか抱けるかもしれない

けれど、こうして自然と足が結衣のもとへと向くうちは、

結衣の声が聴きたいと

あの笑顔を向けてほしいと思ううちは

たぶん、自分は他の恋なんてできない

後悔だけはするなよ、とあの医師に言われた

後悔を抱えたままではきっと新しい恋人も幸せに出来ないから

中途半端な場所に留まっていては、相手にも失礼だ

だからとことん結衣を想いつづけると

もういいか、と思える日まで待ち続けると決めた

結衣を忘れるなんて、けりをつけるなんて

何かしらの大きな出来事がない限り出来ない

結衣以上に大切に想う人ができるとか、もう結衣が目覚める可能性がないとか

そうでも言われないと自分は諦められないのだとここ一年半で理解した

そこまで器用でもないし、結衣への想いが小さく無視できるものではなかったのだ
< 47 / 65 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop