ユキ色
心に浮かんだ言葉はちゃんと口にできていたのかな。
……きっとできていたんだね。
だって、ユキがますます泣きそうだから。
彼女とお幸せに、とか。
そんないい人みたいなセリフは言えないから、せめて。
「ありがとう」
その言葉を最後にユキの背を見送った。
言いたいことはもっとたくさんあった気がするのに、いざとなったらなにも出てきやしなかった。
もっと、もっと、もっと──!
ずっと、あたしたち離れることがなければよかったのに。
別れたくないって思っていた。
なのに、あたしは別れが訪れたことに少し安堵していた。
もう、びくびくしながらユキのそばにいなくてもいいんだ──って。
別れたくなくて、別れたかった。
だから後悔は、しない。