ユキ色
あたしたちが付き合い始めた中学二年生の冬のことだった。
放課後、あたしは終わらなかった課題プリントを手伝って貰っていた。
他には誰もいない薄暗くなってきた教室の中で隣の席を勝手に拝借して、ガリガリと必死に。
頑張れ、と言われながら必死に動かしていた手を、ふと止めた。
今朝、あたしの友だちが『幸せにする』と言って告白されたのに、すぐにふられたことを知ったことを思い出したんだ。
そのことにあたしは不安を感じて、思わず『ユキもいつかあたしのことを好きじゃなくなるの?』と訊いた。
『みんなそうなの?
そんな簡単に大切なことを言って……』
『僕は、黒沢が好きだよ。
僕は傷つけない。
そばにいるだけじゃだめ?』
『ずっとそばにいてくれるの?』
可能な限り、と確かにあいつは頷いた。
だから、あたしからふってあげたりしない。
あたしたちが別れることがあるとすれば、約束に縛られて別れられないユキがあたしをふることだけだ。
始まりはあたしからだった。
なら、終わらせるのはユキだよ。
カチカチとどこからか聴こえる気がする音があたしたちのカウントダウンだとしても、それが終わるその瞬間まで別れてあげない。
だって、浮気をしていても、あたしはユキが好きだから。