城跡に咲く花〜使用人×王女〜
ルシア本人も自分の血筋を忘れ、ただの町娘として生きてくれればと願った。

大切なひとたちの幸せな未来を思えば、ユリアはそれだけで自分が満たされる気がした。


お父さま、わたしも共に逝きます。

最後の王女として…。


そのとき、突然背後に気配を感じ、ユリアは弾かれたように顔を上げた。

ざっと素早く振り向く。


そこにはひとりの剣士が立っていた。

「……まだ残ってたのか…」

鋭い視線を向けてくるのは反乱軍のひとりだろう。

額から流れる血で顔半分が染まり、瞳はぎらぎらと血走っている。

腹部と脚にも傷を負い、彼はふらふらと近づいてきた。


「…お前…王女だな……」

ユリアは殺気を感じて、素早く身を翻す。

大振りの剣が空を切って、ひと息に振り下ろされた。
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