城跡に咲く花〜使用人×王女〜
「…………っ!!」

間一髪で太刀を避ける。

ユリアはその勢いのまま床に倒れ込んだ。


「…王族のせいで俺は……っ」

ゆらりと詰め寄ってくる男は我を忘れたように叫んだ。

「ここで死んで償え…!償えよ!」

床に座り込んだまま、ユリアは身動きできなかった。


「償えぇぇ!!」

男の激昂を聞きながら、思考はひどく冷静だった。

もともと死んで償うつもりだった。

だからここにひとり残ったのだ。


これでいい―――…。


ユリアはそっと瞳を閉じる。

瞼の裏に彼の姿が浮かんだ。


「………………」


けれどしばらくしても覚悟した衝撃は訪れず、ユリアはやがて恐る恐る瞳を開けた。

「……っ!?」

目の前に反乱軍の男が倒れていた。

彼の背には大きな剣が突き刺さっている。


なに…。

一体…?


突然のことにユリアは戸惑い狼狽えた。
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