城跡に咲く花〜使用人×王女〜
ぽたっ―――


「……っ、ばかだな…」

頬を熱い雫が伝い、零れ落ちる。

気づけばどうしようもなく涙が溢れていた。

「それを言うために戻ってきたのか…?」


ユリアは翡翠色の瞳を揺らし表情を歪めた。

次から次へと零れる彼女の涙にグレンはただただ狼狽える。 

「すみません……伝える機会はもうないと思ったので…」

俯いてしまった彼女をうかがい見て。

それでも願いを口にする。

「分相応な想いだということはわかっています…。なにも望んでなどいません―――だけどご慈悲をくださるのなら、どうか最期まで…そばにいさせてください…」


彼女が死ぬというのなら、どうか共に―――


グレンは深く頭を垂れた。


ぎゅっと自分の手のひらを握りしめ、ユリアがぱっと顔を上げる。

「……っ、ばか…ばかっ……グレンのばか…っ」

「………ひ、姫さま?」
< 20 / 36 >

この作品をシェア

pagetop