城跡に咲く花〜使用人×王女〜
ぼろぼろと泣くユリアは普段の王女らしい彼女からはほど遠い。

かつて見たことのない様子に瞳を瞬かせ、グレンはただおろおろと困惑することしかできない。


「……わたしはっ……わたしは…………お前にだけは……生きていてほしかったんだ…っ」

詰りながら紡がれる言葉は、王女としてではなく彼女自身の想いなのだろう。

涙を拭って、彼女はグレンを見上げた。


「…わたしもずっと……ずっとずっと…お前が大切だったんだ…」


告げられるユリアの言葉は現実のものなのだろうか。


彼女の細い手が縋るように伸ばされる。

グレンはその手のひらを信じられない思いで見返した。


触れることが、ゆるされるのだろうか?

彼女は王女で、自分は臣下で。
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