城跡に咲く花〜使用人×王女〜
それでも大切で大切で大切で。

消えない想いを抱えて、今日までを過ごしてきた。

叶わない想いの分だけ、痛いほどに彼女の幸せを祈りながら。


触れ合う手に力が込められ、ユリアがぎゅっと手を握ってくる。

「…グレン、……いまだから言うぞ?」

翡翠色に輝く強い瞳。

「……ずっとずっと…お前が特別だった」


「わたしがいつか嫁ぐ日が来て、他国へ行っても、それでもきっとずっと…一生お前を想っていたよ」

まるで歌うように軽やかに、ユリアはそっと秘密を口にする。


胸が痛かった。

泣きそうになるのを誤魔化すように、グレンはやっとの思いで軽口をたたく。

「……なんで…偉そうなんですか…」

それを受けたユリアは鼻で笑って、いつもの勝気な笑みを浮かべた。

「ははっ、ありがたく思え。本当なら墓まで持って行くつもりだったんだ」
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