城跡に咲く花〜使用人×王女〜
「……もう誰もいませんね」

小首を傾げてグレンが問う。

「そうだな…」


ヘーゼルと翡翠色が絡まる。

「…ずっと言いたかったことを言ってもいいですか…?」

ユリアはそっと微笑んだ。

「…この城と共に、全て跡形もなく消えるだろう」


交わした想いも、言葉も、ぬくもりも。

後にはなにひとつ残らない。

それでいい。

誰にも知られることはない。

だからどうか、告げるはずもなかった想いを…伝え合うことをゆるしてほしい。


「愛しています、ユリアさま…」
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