城跡に咲く花〜使用人×王女〜
まっすぐに見つめてくる翡翠色。

「………っ」

胸がぎゅっと締めつけられた。

「………あなたは俺を一体どうしたいんですか…」

泣き出したい気持ちでグレンは思った。


ああ…。

ほんとに彼女には敵わない。


「反則です…」と弱々しく呟いて、グレンはユリアを抱きしめた。

涙目でそれでも気丈に微笑む彼女が、心底愛おしい。


伝え合うこともゆるされず、なにひとつ言葉にできないままでここまできた。

惹かれ合い、想い合い。

それでもふたりに未来はなかった。

いま終わりに向かうこの一瞬は、天に与えられた奇跡なのだろうか。


「俺も…俺ももう二度と、…あなたを諦めません」

グレンは精いっぱいの想いを込めて、彼女に囁く。

「愛してます、ユリアさま…」

抱きしめる腕に力を込める。


ユリアは穏やかに微笑んだ。
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