城跡に咲く花〜使用人×王女〜
カチリと音がして、床の一部が開き持ち上がる。

分厚いカーペットには、そうとわからないように切れ目が入り、床に扉が隠されていたのだ。

開いた隙間の向こうには、暗く狭く石畳みの階段が地下へと続いていた。


「非常用の抜け道だ」

それは王族しか知らない、非常時に城外へ抜ける隠し通路。


ユリアの言葉に誰もが驚いて狼狽える。

「姫さま!これは王家の極秘事項では…」

「他言なさっては…!」


「よい」

ユリアは短く答えた。

「この城はもう時期崩れる。秘する必要もないだろう」

薄く微笑するその横顔はどこまでも穏やかだった。

「これを行けば西の森まで抜けられるはずだ」


侍女たちの鳴き声が大きくなる。

「……姫さま…っ」

「…どうかどうかご一緒に……」
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