城跡に咲く花〜使用人×王女〜
懇願の声を聞きながら、グレンは自分の手をきつく握りしめた。

決意してしまった彼女は、きっとどうあっても意志を変えることはないだろう。

他人をまもるために自分の犠牲を厭わない。

ユリアはそういうひとなのだ。


「……わたしの最後の願いだ…。頼む…」

最後という言葉に息をのみ、やがてみな涙ながらに頷いた。

ただひとりグレン以外―――


「姫さま…俺は……」

「……グレン、お前はわたしの騎士ではないだろう?わたしを護る義務などない」


言いかけた言葉に被せて、ユリアがひと息に告げてくる。

グレンはそれでも首を横に振った。

「…っ、その騎士も逃して、一体誰があなたを護るんですか…!!」

「……いいんだ」

「………っ」

彼女の気持ちは痛いほどわかる。
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