それでも、僕は恋をする。
「くそ。人の気も知らねぇで、よくもまあそんなことが言えたもんだわ。そういうのをな、贅沢な悩みっていうんだよ」
拓矢は、僕の言葉をまったく理解しようとはしなかった。
「この調子だと、来週も告白されるんじゃねぇの?だって、遊園地だぜ?」
拓矢はにやりと笑って僕を見た。
そう。
来週は遠足。
バスに乗って遊園地に行くことになっている。
「非日常にハプニングは、つきものだろう」
そう言って勝手にはしゃいでいる拓矢に、少しいら立った。
なんだよ。人の気も知らないで。
「……茶化すなよ」
そう言った僕の声色が、微妙に変わっていたのに拓矢も気づいたのか、僕の肩にぽんっと手を置き。
「だけどさ」
「ん?」
「お前、振ってばかりいるけどさ。お前の好きな奴って、いったい誰なわけ?」
その言葉に、心臓をぎゅっと掴まれたような心地がした。
「それは……」
まさか、本当のことなんて言えるはずがない。
今、僕の隣りを歩いている、クラスメイトの君だ、なんて。
「……教えない」
「なんだよ。つまんねぇな」
拓矢は肘で僕の腕を小突いた。