それでも、僕は恋をする。
『気持ち、伝えられてよかった』
自分の部屋のベッドに寝転がって、天井を眺めながら、彼女の言葉がぐるぐると頭の中を巡っていた。
もし、僕が。
彼女のように自分の気持ちを伝えたりなんかしたら、とんでもないことになる。
きっと、拓矢は僕のことを気味悪がるだろう。
そして、友達でもいられなくなる。
そばにいられなくなるくらいなら、友達でいい。
告白されるたびに、自分の恋は絶対に実らないことを思い知らされる。
実るどころか、思いすら告げられないことも。
大きなため息をつきながら、腕を目がしらに当てた。
その時。
トントンと扉をノックされたので、慌てて身を起こし「どうぞ」と声をかけた。
「こんばんは。リン」
そう言って入ってきたのは、家庭教師の直海(なおみ)さんだった。
直海さんは大学生のアルバイトだけど、教え方はとても上手で、わかりやすい。
「ああ、直海さんか」
「なんだよ。その、どうでもいい奴が来た、みたいな言い方」
そう言うと直海さんは僕の額にでこぴんした。
「痛っ」
思わず額を手で押さえると、直海さんは「罰だ罰」と言って嬉しそうに笑った。