大嫌いな最愛の彼氏【短編】


「『嫌い』じゃないから…」

「…え……?」


愛華の口にした言葉が、どういう意味なのか。

彪河には、はっきり解らなかった。

でもこの後、彪河の疑問は、一瞬にして打ち消された。


「『嫌い』じゃない。アタシはアンタが……『好き』」


二人の心臓は、今にも張り裂ける程だった。

通じ合った想い。今までの色々な気持ちが、一瞬で幸せなモノへと変わっていく。


「好きだから…ここにだって来た。あんなんで、終わらせたくなかったんだってのっ」


愛華の頬は、ほんのり赤く染まっている。

それが彪河には、心底可愛く見えて。


「ヤッベェ……」


思わず愛華を、ギュッ…と抱きしめていた。


「ひゅっ…彪河!?」

「ヤバイ……お前、可愛すぎ」

「はぁ!?」


『ふざけんなっ』と、顔を真っ赤にして、彪河の腕の中でもがく。

でも、愛華の力は彪河に敵うわけがなく。

彪河は、抱きしめる力を、更に強めた。


「…離さねぇよ」

「え……」

「やっと手に入れたんだ。もう……離さない」


そう言って、愛華の顎を右手の指で持ち上げた。


「好きだよ、愛華」

「う……ん…」


恥ずかしがりながらも、愛華は小さく頷く。

そして二人は、そっと口付けを交わした。

甘く…深く…そして優しく。

絡み合う舌に、愛を確かめ合う。ゆっくりと離れていく唇。

そして二人は見つめ合う。


「素直な愛華も…スゲェいい」

「ウゼェ……」



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