大嫌いな最愛の彼氏【短編】
あいつの第一印象は最悪。

顔は可愛いくせに、口は悪いし俺にはいちいち反発してくるし……。

本当、ムカツク奴だと思った。



――…田所 彪河。

学校で一、二を争う程のイケメン。喧嘩っ早く、とても強い。

そして、こいつの最も悪い所………女ったらし。


狙った獲物は逃さない。

片っ端から女を落として、必要が無くなれば、すぐに捨てる。

こいつはある種、悪魔のような奴なのだ。



――…そして『あいつ』とは、『宮原 愛華』の事である。

彪河の毎度の喧嘩相手。

喧嘩とはいっても、皮肉を言い合う程度で、愛華は女だから、彪河が手をあげるわけにはいかないのだ。


最初は愛華の事なんて、大嫌いだった。

でもいつの間にか…彪河は愛華の事が好きになっていたのだ。


反抗的な態度。

でも実は、とても人の事を考えている、心優しい女で……。


気が付けば、愛華の全てが愛おしかった。


あいつが時々見せる笑顔――。


全てを俺だけのモノにしたいと思った。

誰にも触らせたくない。



―…あんなに女ったらしの彪河が、本気で誰かを好きになったのは、今回が初めてだった。





「なぁ、鎌樹」

「あ〜?何だよ?」


彪河は自分の家に、鎌樹を招いていた。

鎌樹は高校からの親友。同じクラスになった事がきっかけで、自然とつるむようになった。


「俺さぁ…好きな奴出来たかもしんない」

「はぁ?お前、本気?毎晩のように女とヤってるお前が?」


鎌樹は痛い所をついてくる。

確かに彪河は、ほぼ毎晩女を抱いている。

勿論、毎回違う女だ。続いたとしても、最高で三回が限度。

これ程までに、彪河の女ったらしは酷いモノなのだ。



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