大嫌いな最愛の彼氏【短編】
「惚けないでよ!!私から彪河を奪ったのは、アンタなんでしょ!?」


そう言うと、女はいきなり泣き出した。


「はぁ……意味解んねぇんだけど」


愛華は、かったるいと言うように、自分の長い髪を、肩から払った。

そんな愛華をみて、その女の取り巻き達が、愛華に詰め寄った。


「何でそんな事が言えるの!?千波(チナミ)は、彪河君と付き合ってたのに、『愛華の事が好きになった』ってフラれたのよ!?」

「………は…?」


愛華はこいつらが、一体何を言ってるのか、全く理解出来なかった。

彪河が愛華を好きになるわけがない。

愛華は無性に腹が立った。


「…奴がアタシの事、好き?はぁ?勘違いも程々にしろよ。いくらなんでも、有り得ねぇに決まってんだろうが。そんな言い訳、騙したに過ぎねぇんだよ」


愛華の怒りは、一向におさまらない。淡々と言葉を続けた。


「だいたい……アンタは奴に飽きられたんだよ。それぐらい気付くだろ?あんな女ったらしが、何時までも一人の女に靡くと思ったら、大間違いなんだよ。そんなつまらねぇ茶番に、巻き込むんじゃねぇ」


『さっさと消えな』そう吐き捨てて、愛華は家に入った。




ばんっと乱暴に玄関を閉める。ちょうど目の前には、鎌樹(レンキ)が立っていた。


「お前さぁ〜マジ恐すぎぃ」

「黙れ、クソ鎌樹」


鎌樹と愛華は双子だ。鎌樹が兄、愛華が妹。

鎌樹が生まれたのが、11月17日PM11:57で、愛華が生まれたのが、11月18日AM0:02なので、生まれた日が一緒じゃない。

とても珍しいケースらしい。



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