大嫌いな最愛の彼氏【短編】
佇む鎌樹を無視して、愛華はリビングに入った。

その後を鎌樹が追う。


「愛華。お前はもっと、自覚を持てよ。お前は恐いんだよ。普通の奴が、お前にあんなギタギタに言われたら、誰だって怯え始めるぞ?もっと抑えろ、その殺気」


鎌樹は呆れ顔で、愛華を見る。

その視線に気付いた愛華は、鎌樹を睨み返した。


「何で鎌樹に、説教じみたこと言われなきゃなんねぇんだよ?つぅか殺気とか、ふざけた事ぬかしてんじゃねぇぞ」


愛華はそれだけ言い残すと、ミネラルウォーターを手にして、二階へ駆け上がっていった。

はぁ〜〜〜と尋常じゃない溜息をつく鎌樹。


「ったくよぉ……これじゃ、彪河が可哀相だな…」








愛華は自分の部屋に入ると、ベットに身を投げた。


「ちっきしょ…訳解んねぇっ」


あの女が言ってた彪河の言葉。


―『愛華の事が好きになった』


ふざけてんじゃねぇぞ。

人を馬鹿にするのもいい加減にしろ。

いくら女を駒に遣えば気が済むんだよ。


愛華の心は掻き乱されていた。


「ぜってぇ、吐かせてやる…」


愛華はそう思った。

でもその思いが、愛華と彪河の関係を揺さ振る事になるなんて

誰も知らなかった…。




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