大嫌いな最愛の彼氏【短編】
次の日――…。


愛華は学校に着くと、一目散に奴のクラスへ向かった。


「田所 彪河……居るか」


ざわっ…とどよめいたクラス。

愛華が彪河を呼びに来るなんて、今日が初めてだからだ。

ここに居る全員が、これからまた、喧嘩が始まるんじゃないかと、ハラハラしている時だった。


「………何か用?」


教室の奥から、彪河が出て来た。


「ちょっと来い」


愛華は物凄い剣幕で、彪河の腕を掴み、その場を立ち去った。

彪河は抵抗することなく、愛華に着いて行く。


愛華と彪河が来たのは、体育館の裏。

そこで立ち止まると、愛華はくるりと身体の向きを変え、彪河を睨み付けた。


「テメェに聞きたい事があんだよ」

「何だよ?……早めに終わらせてくれよな。お前に付き合ってる暇ねぇんだよ」


やる気のなさそうに、欠伸をする彪河。

一方愛華は、沸々と煮え繰り返る怒りを、必死に抑えこんでいた。


「テメェ……何でアタシの名前使って、女振ってんだよ」

「……………は?」

「知らねぇとは言わせねぇ。昨日アタシの家に来たんだよ、お前の振った女が。そしてそいつに言われたんだよ、『彪河はアタシの事が好きになったから、自分を振ったんだ』って」


じりっ…と愛華は彪河に詰め寄る。そして、さっきよりも、低い声で彪河を責めた。


「だからアタシ、そいつに『彪河を奪った女』って言われたんだよ?…ふざけんじゃねぇ。誰がこんな奴、奪ってやるかって話なんだよ。人をくだらねぇ茶番に巻き込みやがって」



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