超企業
だいたいどうして僕はこんな人に声をかけてしまったんだよ。
「なんで謝る…?」
その人は案の定の渋い声でタバコの煙を吹きながら答えてくれた。
「あ、いや、機嫌わるそうだったから、アハハ…。」
ふっ、と微笑んでタバコをジリジリ吸うその男。
「僕は秋山ラット、正直この会社には入るつもりもなかったんだけどさ、ここしかないっていうか、残されたのが唯一ここだったっていうか。」
フフ、と笑ってその男も話す。
「一人でベラベラ話して、別におれぁ誘導尋問するつもりはねえよ。落ち着けよほら。」
その男はこっちを向き、タバコを差し出してきた。
「ご、ごめん、僕タバコ吸わないんだ。」
「そうか。」
男はふーんって感じで内ポケットにタバコを戻す。
「名乗るほどでもないけど、俺は唯野ジン(タダノジン)ってんだ。志望動機はアンタと同じさ。」
僕と、おなじ?
「あ、じゃあ唯野君も他の会社落ちまくってやる気なくなっちゃった感じなの?」
僕がそういうと、唯野君はペチッと頭をしばいてきた。
「馬鹿やろう、そんなんじゃねえよ。ただな、俺はサラリーマン真剣にやろうと考えてんだ。それなのにどこの企業も適当なことばっなり返しやがって俺にあった所なんてなかった。こっちから蹴りまくってやったのさ。」
なんか、すごい渋い。
できる男のオーラがバリバリでてる。
「じゃあ、唯野君は社長とか会長とかやるつもりなかったの?」
僕がそう聞くと、唯野君はまた微笑んで返してくれた。
「ばぁか、俺は係長志望なんだよ。」
い、意味が分からない。