超企業

「ただの…、係長?」


はっ、しまった…、僕はとんでもない発言をしてしまった気がした。




けれど唯野君は笑いながら答える。




「はっはっは、そういうことだ…。普段は何気ない窓際で、重要任務は絶対にミスらずやってのける。俺はそういう男を目指してるんだ。」




…、ますます意味が分からない。



多分彼は映画やドラマのみすぎなのだろう。



「ほら、無駄話してるうちにゾロゾロおいでなすったようだぜ?」



唯野君に言われて気づいた。


いつの間にか会場には人が集まっていた。



20名、揃ったのだろうか、会場はよりいっそう暗くなり何かがいよいよ始まりそうだった。



そのときだった、ステージに照明がひとつに集まり、誰かが出てきた。




「え…?」




驚いたことに、その照明の中に出てきたのは小学生高学年ほどに見える少年だった。




その人物がマイクで幼い声で話し出す。



「えー、本日は我が社グランドクロスに入社いただきまことにありがとうございます。会長の千代川クロノ(チヨカワクロノ)と申します、よろしく。」




パーティー会場はザワザワし出した。


僕も正直驚いた。いくらすごい企業でも子どもが会長だなんて。




「はっはっはっは!やっぱり一流の会社はオリエンテーションも斬新なんすねえ!」


そんな声も漂っていた。




「えー、静粛に。本日お集まりいただいたのはレクレーションでございます。みなさまそれぞれの絆を深めていただきたくご用意致しました。なお、仕事内容については本日の最後にご紹介させていただき、皆様には早ければ明日からお勤め願う所存であります。」




少年にしてはしっかりモノを言う風貌がまた一流企業っぽかった。


あの少年は社長か誰かの御子息だろうか。





「それではまた参ります。皆様で自己紹介などでもしてお楽しみくださいませ。本日はグランドクロスにお集まりいただき誠にありがとうございます。」




そう言うと、少年は奥に消えてゆき、パーティー会場は明るくなった。
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