超企業
僕は会場からいったん抜けて母さんに電話した。
プルルルルー、プルルルルー、ガチャ、
「もしもしラット?どうだった?会社、うまくやっていけそう?」
「う、うん、なんとか、難しそうだけど、やるだけやってみるよ。」
「え?、あんたなんか声震えてない?大丈夫なの?」
「大丈夫だって、一応そのことだけ連絡したかったからさ。」
「まあ入ったからには継続させるのよ?すぐやめちゃったりしたらダメだからね?根気よく粘り強く頑張りなさいね。継続は力なんだならね。」
「あー、はいはい分かってるって。ありがとう、必ずまた戻ってくるからね。」
「うふふ、なに言ってんの当たり前じゃない。」
「そ、そうだよね。あはは、そういうことだから、また連絡するね。」
「はーい、無理せずにね。」
ガチャ、ツー、ツー…。
なんか、もう二度と戻れない気がした。
まだあと二時間ちょっとある。
帰って就活やり直す手もあるじゃないか。
だいたい命にも関わる重大な仕事ってなんなんだ?
戦争に行けっていうのか?
ただただ僕には不安が募るだけだった。
どうする!?あと二時間しかないんだぞ!?
死んだら、2兆円もくそもないじゃないか!
ていうか本当に死ぬのか?
本当に2兆円なんてこの世にあるのか?
初めから殺す気なんじゃないのか?