超企業
「遅れてしまい申し訳ございません。お通夜は…、終わったみたいですね。」
残念そうに彼女は言った。
「六道さん…。」
「せめて、私が弔いを、そして御冥福をお祈り致しましょう。」
そう言うと、六道さんはお経のようなものを唱え始めた。
その場で座禅を始めた六道さんは今までみてきたどの住職さんよりも理にかなっているような気がした。
その詠唱のおかげで僕の心まで落ち着いたくらいだ。
お経が終わり、こちらに一礼をする六道さん。
「私は、千代川を許しません。今宵、彼をリクドウに堕とすことを決意しました。」
まるで彼女はジャンヌダルクのように勇敢にみえた。
リクドウっていうのは彼女の名字でなんだか分からないけど、僕はなにか協力しようと思えた。
「六道さん、彼は危険だよ。僕も協力するからさ!」
六道さんは、微笑みながら
「ふふ、ありがとう秋山君、ですが私一人で大丈夫です。人道に反する者を許してはいけませんが、あなたを危険にさらしたくないのです。」
どこまで勇敢な女性なんだよ…。
「僕も一緒にいくよ…。」
ピピピ!
そのとき、また会長から連絡が届いた。
「皆様に新たなご報告があります。死者が一定の量を越えましてので、新たにバーを開きました。人件費が消えることによってこのように会社には新しい部屋を用意します。このような事もまだまだ用意しているので、生き残りは常に希望を失わずに仕事に励んでください。」
僕は、さらに怒りに震えた。
すると六道さんはその震える僕の手を握って
「今のあなたでは千代川には通用しません。怒りに支配されていてはかえって私の足手まといになります。あなたはその新しいバーで頭を冷やしてください。私も必ずあとで行きますのでそれまで待っていてくださいますね?」
こんな時だというのにものすごい落ち着きを見せる六道さん、まるでその姿は神に等しかった。