この運命を奇跡と呼ぶならば。
沖田のその声に桜は頭を左右に振るが、涙は止まらず畳の上にシミを作っていく。
「乙宮君、顔をあげなさい。」
そんな桜に近藤さんの暖かく優しい声がかかる。そっと、桜が顔を上げると皆が瞳に温かい光を宿して桜を見ていた。桜は予想外の事に涙を流しながら、驚きの声を漏らした。
「え…。」
「桜、女であることを黙っていた事は褒められることじゃねぇ。だが、お前はちゃんと言った。謝った。俺たちゃ、お前を追い出そうとは思っちゃいねぇ。」
その言葉に更に涙を流していると、ふっと暖かい何かに包まれ背中を摩(さす)られながら声がかかった。
「桜ちゃん、話してくれてありがとう。」
「そ、うじッ…ぁ…ッ」
「泣いて、いいよ。平助の傷の事は僕が、僕らが言っておくから、今は泣いて、いいんだよ。」
「ぁ…ふ…ッぁ… ウゥ…ごめ、…んッ。」
総司が抱きしめていたが、その腕の中で泣き疲れて寝てしまった。
「寝ちゃいましたね。僕、部屋に運んで着ますね。」
そう言って沖田は立ち上がると部屋を出ていった。