この運命を奇跡と呼ぶならば。


沖田のその声に桜は頭を左右に振るが、涙は止まらず畳の上にシミを作っていく。

「乙宮君、顔をあげなさい。」


そんな桜に近藤さんの暖かく優しい声がかかる。そっと、桜が顔を上げると皆が瞳に温かい光を宿して桜を見ていた。桜は予想外の事に涙を流しながら、驚きの声を漏らした。



「え…。」


「桜、女であることを黙っていた事は褒められることじゃねぇ。だが、お前はちゃんと言った。謝った。俺たちゃ、お前を追い出そうとは思っちゃいねぇ。」


その言葉に更に涙を流していると、ふっと暖かい何かに包まれ背中を摩(さす)られながら声がかかった。



「桜ちゃん、話してくれてありがとう。」


「そ、うじッ…ぁ…ッ」



「泣いて、いいよ。平助の傷の事は僕が、僕らが言っておくから、今は泣いて、いいんだよ。」



「ぁ…ふ…ッぁ… ウゥ…ごめ、…んッ。」


総司が抱きしめていたが、その腕の中で泣き疲れて寝てしまった。



「寝ちゃいましたね。僕、部屋に運んで着ますね。」




そう言って沖田は立ち上がると部屋を出ていった。
< 114 / 359 >

この作品をシェア

pagetop