この運命を奇跡と呼ぶならば。
そう言うと桜は瞼を閉じる。
「〝また〟?」
「そうよ。〝また〟大事な人が目の前で失われるのが恐かった。」
「ねぇ、君のその大事な人って…?」
「私の大事な人?それは、貴方達よ。」
桜は沖田の質問の意味を理解しているのかしていないのか、上辺だけの答えを言う。そんな桜の態度に苛立ちを覚えたのが沖田。
「桜ちゃん、真面目に答えてよ。」
その言葉にも苛立ちが感じられる。それを察した桜は起き上がると真剣な顔で言った。
「私の大事な人は…双子の兄よ。この世でたった一人の肉親。」
「お兄さん?それに…たった一人って…?」
「私に両親は居たけど、今は兄だけよ。」
桜はそう言うともう一度、目を閉じ畳に転がった。…それ以上、自分の事を詮索するのは許さない。と言った様に。