この運命を奇跡と呼ぶならば。
しばらくしてから学校を出て春のいる病院へ向かったの。
『春ッ…早く起きてよ。独りにしないでよ…ねぇ…』
春は私を庇った事で意識不明の重体になってて、ずっと昏睡状態にあったの。
それでも、僅(わず)かな希望を信じて…いや、希望に縋(すが)っていたかった。
春は絶対目覚めるって。そう思わなくちゃ自分が壊れてしまいそうだったから。だから、毎日毎日春のお見舞いに行ってそうやって声をかけて…
でも、私の僅かな希望もある日医者に言われた事によって一瞬で砕けたわ。
『先生、お話とはいったいなんでしょう?』
医者に呼ばれた私は期待に胸を膨らませながら先生に聞いたわ。そしたら、医者は少し暗い顔をしながらこう言ったの。
『乙宮さん。よく聞いてください。』
『はい。』
『…春君、君のお兄さんはもう目を覚ますことはないでしょう。覚ますとしたら奇跡でも起きない限り…目を覚ます可能性はほとんど不可能に近いです。』
一瞬何を言われたか分からなかった。
『先生…?うそ、でしょう?』