この運命を奇跡と呼ぶならば。
桜は唐突な斎藤の申し出に驚いていたが、すぐに状況を理解すると口元を歪めて余裕のある表情を見せ、頷いた。そして、桜の返事を聞いた斎藤は桜に尋ねる。
「竹刀と木刀、どちらにする。」
「木刀で。」
そう言うと、それぞれが所定の位置に着いた。そして、少し離れた場所にいた永倉を呼び審判を頼むと木刀を構えた。
「─────はじめっ!」
掛け声がかかった瞬間、二人はほとんど同時に動いた。
「…ッ!!」
「…まだまだッ!!」
斎藤が押していて桜が劣勢に立たせれているが、桜は次の瞬間ニヤリと笑うとこう言った。
「…もう、終わりにしようか。」
その瞬間、桜の持っていた木刀は斎藤の首筋に当てられていて、斎藤は驚きで目を見開いている。
「勝者、乙宮 桜!!」
永倉がそう言うと桜は斎藤の首筋から木刀を外して機嫌が良さそうに道場を後にしようとした瞬間、パチパチと手を叩く音が聞こえてき、音がした方を見た桜は先程とは雰囲気が一転し嫌そうに顔を歪めた。
「伊東さん…」
「お見事ですわ、乙宮くん。」