この運命を奇跡と呼ぶならば。
「そりゃ、どーも。では、失礼します。」
桜は短く返事をすると、伊東の横を通り過ぎようとしたのだが、呼び止められてうんざりしたように立ち止まった。
「なんですか、伊東さん。まだ、私に用でも?」
「いえ、とてもお強いようですから1度お手合わせをしていただけないかと。」
「そうですか。ですが、私は先程の試合で疲れたので。次の機会にでも。」
伊東はそんな桜の態度を気にした様子もなく、表面上は穏やかな笑みを浮かべた。そして、桜は今度こそ、道場を出た。
「…しつこい。試合してたの見てたなら、今度にしなさいよ!!ほんと…」