この運命を奇跡と呼ぶならば。
少しちゃらけたように肩を竦(すく)めた桜を見て斎藤は少し苦笑いを浮かべて言った。
「最近は、山南さんも籠っているからな…」
「まぁね。だから、元気出してくれると嬉しいけど。」
桜は斎藤と会話しながら手際よく料理している。そして、こう言った。
「…よしっ!出来た。」
「もう出来たのか?」
「うん。一、少し味見してみて。」
斎藤は少し驚いた様に言い、桜に言われた通り味見の為に出来た雑炊を少し口に含むと満足そうに頷いた。
「…よかった。じゃあ、山南さんに持ってくか。一、ありがとね。」
桜はそう言うと、お盆に匙(さじ)と雑炊の入った鍋を乗せると厨房を出て、斎藤も自分の部屋へ戻った。