この運命を奇跡と呼ぶならば。
桜はそれから、しばらく泣き続け、涙が止まり落ち着いた時は屯所を飛び出してからかなりの時間が経っていた。
「…うわ、もうこんなに時間が経ったのね。」
空を見上げると太陽が沈み掛かっていて、辺りは暗くなり始めていた。
「まだ…帰りたくないな…」
桜は木の幹の根元に座り込んでいたが、そう言うと立ち上がって木を登り始めた。そして、太めの木の枝に座った。
「…わぁ、凄い。」
桜は思わず感嘆の声を漏らした。日の沈みかかった京の町は絵に映したように綺麗で、星がキラキラと光っている。
「春にも、見せてあげたかったな…」