この運命を奇跡と呼ぶならば。

「どうして、あの人あんな所に立ってるの?」


「さぁね?」

桜の言葉は険を含んでいて少しだけ棘があった。

そして気にせずすれ違うとき伊東が動いた。


「おかえりなさい、一番隊、八番隊の皆さん。」


「…ただいま帰りました。」

沖田と桜は形式上の挨拶だけするとそれ以上は口を開かなかった。

「それで藤堂組長、後でお話があるのです。巡察から戻ってきてすぐは悪いのですけれど。」

「…はい。」

「ありがとうございますわ。では、また後で。」

そう言うと沖田と桜を通り越し屋敷内へ戻って行った。

「平助、疲れてないか?わざわざ、伊東のところに行かなくても…」

伊東が去った後、桜は心配そうな声音で藤堂に尋ねた。
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