この運命を奇跡と呼ぶならば。
「…いや!大丈夫だ!待たせちゃ悪いから、俺先行くわ!!ごめん!!」
藤堂は大きな声でそう言うと屯所へ駆けて行った。
「平助、大丈夫じゃないでしょ。」
「えぇ。わざとらしい。見るからにから元気だな。俺は元気がありません、って自分で言ってるようなものだ。」
沖田と桜は遠ざかる藤堂の背中を見ながら呟いた。
(…慶応3年。そろそろ伊東が動き出す。)
沖田も端整な顔をゆがめながら羽織を脱いで桜とともに庭へ出た。
「それより、寒いね。」
「うん。もう1月か…雪でも降ってきそうだな。」
「そしたら、みんなで遊ぼうか。」
「土方に怒られるわよ?」
桜もそう言いながら口元には笑みが浮かんでいる。
「土方さんにも、雪玉作って当てようか。それで皆と〝鬼ごっこ〟するのもいいかもね。」