この運命を奇跡と呼ぶならば。
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もうすぐ日も暮れかかり街も少しずつ静かになってきた頃、桜と沖田は桜の木のある丘へ来ていた。

「綺麗だね。」

「そうね。」

夕日に染まる街は綺麗で沖田は眩しそうに目を細めた。

「私が、初めて。ほんとに初めてこの街に来た時、ここにいた。気が付いたらここにいて何がなんだかわからないまま、貴方達に逢った。苦しくて、苦しくてずっと苦しかった。でも、光が見えた。その光は、温かくって優しくて、何より愛しい。」

追憶に身を委ねている桜を沖田は黙って見つめている。


「…そうだ。なによりも、愛しい。」

「桜ちゃん…。」

「でも、きっと、私は…ここから、いつか居なくなる。」

「え?」

「私は、未来に帰るの。いつか。春の待つ私の時代に。」

桜がとぎれとぎれに話す言葉を理解できないとばかりに沖田は穴があきそうなほど桜を見つめる。

桜は沖田に背を向けていたが沖田の方に向きなおし、その視線を受け止める。

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