この運命を奇跡と呼ぶならば。
「…私は、すごく迷ってた。帰るべきか残るべきか。置いていかれる人の寂しさを、辛さを知ってるから。でもね、総司達とここに残れば意識のない春を、私はあの時代に置いていくことになる。だから、私は帰ることにしたの。これは、責任や義務の為じゃなく、私自身が決めたことなの。…だからといって貴方達を置いていけば同じことになるのだけれど。」
二人の間に流れる沈黙をやぶったのは桜で、凛とした声で真っ直ぐ前を見つめていた。けれど、その手はギュッと強く握り締められていた。
「桜ちゃんの意思なんだね。…それなら僕は君が未来へ帰るその日まで君と笑顔で過ごせるように。ね?」
「総司。」
「さぁ、帰ろう?今日は楽しかったね。」
沖田は桜の決意にニッコリと微笑みながら手を差し伸べた。が、桜にはその笑顔は無理矢理作られてような笑顔に見え、声もよく聞いていなければわからないが震えていた。
桜は沖田の名前を心配そうに呼ぶが沖田は戸惑っている桜の手を取り歩き始めた。
「ねぇ、総司。この先、何があっても人を恨まないで、仲間を信じて貴方の誠を貫いて。」
「いきなりどうしたの?」
「なんでもないの。ただ、忘れないで。まぁ、ただのワガママなんだけど。」
「絶対忘れない。桜ちゃんのことも、過ごした日々も。」
桜と沖田の繋がれた手はギュッと握りしめられ、そして、続けた。
「これから過ごす日々も。」