この運命を奇跡と呼ぶならば。
「大丈夫だって。私だって新選組隊士なのよ。」
大丈夫、いくらそう言っても近藤たちの顔から不安そうな影は消えない。そして、はぁ、と一つため息をつくと話題を転換した。
「で、一はいつ帰ってくるの?」
「3日後の予定だ。その時に幹部の奴らには伊東の企みについて話すつもりだ。」
淡々と話す土方からは眉間のシワは消えていたが近藤の顔からは心配している様子が拭えないでいる。
「そう。でも、新八や左之にはうまく言わないとまた大きな声で怒るわよ。」
「あぁ、そこは俺がうまく宥める。お前たちはみんなに包み隠さず言いなさい。」
近藤がそう言うと桜はひとまず安心したが、すぐに別の不安要素が頭に浮かんで来た。
「…総司。」
「あ?」
「総司よ。近藤さんのことになったらあの子、歯止めが聞かないでしょう。体調だって…。」